未来

無邪気な人間

彼は無邪気だった。 彼のことを気に入った人たちは、彼が驚くほどの熱意をもって彼に執着した。 彼に対して、何度も「あなたが好きだ」と伝えた。 彼のことを気に入らない人は、彼の前でも平然と「あなたが嫌いだ」と言った。 彼に会うたびにその人たちは、…

手紙

わたしが生きている間に、あなたがこの手紙を読んでいるということはないでしょう。だからわたしはもう、その世界にはいないのでしょうね。あまり苦しまずに死んだのならいいなあ、と思います。とは言え、今までの人生で苦しむことが少なかったので、死ぬ時…

りんご嫌いの、ひねた子

とりわけ重要な象徴のひとつ りんごが悪魔の実なんて、と彼は言った。それほどおいしくもないじゃないか、あんなものと。僕はべつにりんごの肩を持つわけではないけれど、きらいでもないし、どちらかと言えばりんごはおいしいと思っていたからなにも言わなか…

自分の意思で動かなくなる時計

-彼が嫌な人間だなあと言うと、彼女はうん知ってると言う 『ねえ本当にいま生きているのは君がいたからだよ、と言われた。なにがあったのかはおぼえてない。なにがあったんだろうと訊くが答えはかえってこない。俺はいやな人間だなあと言うと、彼女はうん知…